ストーリーブランディング
“新たなる希望”

専門家をストーリーテラーへ
変えるメディア
『TELLIG』へようこそ。

    1. Welcome

    プロローグ

    「ちくしょう、やっぱりそうか」

    僕に振り向いた彼女の目を見たとき、そう感じた。

    美術館の通路を歩いているときだった。

     

    それは夏の日で、汗ばんだ肌にシャツが吸い付くほど暑かった。

    しかし美術館での出来事で、僕は凍りつくことになる。

     

    これから語るのは、
    僕が体験した恥ずかしい出来事だ。

    公の場で語りたくはないが、語らなくてはならない。

    なぜなら、現代のストーリーテラーを志す専門家が、かつての僕と同じ罪を犯しているからだ。

     

    この先を読めば、あなたは現代のストーリーテラーの悲惨な現状を知ることができるだろう。

    あなたが “ 知りたければ ” の話だが…。

     

    この際、
    あなたには正直に告白しよう。

    僕はこの美術館に来るまで、自分にはまだ隠された才能があって、今はその才能が開花していないだけだと自分に言い聞かせていた。

    そしてその小さな望みが消えないよう、あえて挑戦を避けていた。

    もし挑戦して失敗したら、自分は才能のない出来損ないだと証明されてしまうから。

    僕は怖かった。

    自分が傷つくのが。

     

    芸術家の物語に触れている間は、自分から逃げることができた。

    周りの来館者たちはヒソヒソ話しながら、絵画を眺めている。

    しかし目の前の彼女だけは、僕に振り向き、ジッと見つめてきた。

     

    僕は彼女が怖かった

    僕は嘘がバレた子供みたいに、肩を上げ、拳をギュッと握って体を強張らせた。

    僕と彼女の間に響くのは、自分の心臓がドッドッドッと鼓膜を叩く音だけになる。

     

    彼女は薄い唇を僅かに開いたが、何も言わなかった。

    でも、目を見ればわかる。

     

    「私がなにを言いたいのか、
    わかってるんでしょ」

    そう言われた気がした。

     

    「ちくしょう、やっぱりそうか」

    僕はもう一度、そう感じた。

     

    「やっぱり、傷つくのが怖くても、自分の物語を語らないとな」

     

    ヨハネス・フェルメールが描いた『真珠の耳飾りの少女』が僕に振り向いたとき、僕は心の奥底に情熱を見つけた。

     

    今までその情熱に気が付いていないフリをしていた。

    でも彼女は、僕の嘘を見透かした。

    僕は恥ずかしくて、悔しくて、心臓を握られているようだった。

    それでも、彼女の瞳から目を逸らすことができない。

     

    なんでこんなに
    心が動いているんだ?

    あの瞳の奥には、どんな物語があるのか。

    あの時の僕には、なにも分からなかった。

    ヨハネス・フェルメール作『真珠の耳飾りの少女』

    あなたが人を動かすリーダーに
    なるための最大の鍵とは?

    あの日から何年も経っているのに、彼女の瞳を忘れることができない。

    僕はあの日からずっと、誰もが「語るべきストーリー」を持っていると信じている。

    そしてそのストーリーを語ることが、生きる意義だと信じている。

    だからこそ「自分の物語を語りたい」と望むあなたの力になりたい。

    そうしてこのメディアが生まれた。

     

    『TELLING』は
    「専門家がストーリーテラーに変わる」
    ための場所

     

    そしてストーリーブランディングを構築し、リーダーになりたいあなたのための場所なのだ。

     

    ストーリーは数万年以上の時を超え、ホモ・サピエンスである僕らを惹きつけ、離さなかった。

    このストーリーの力を自由に操ることができたら…

    あなたは影響力を持ち、人を動かすリーダーになれるだろう。

    ブランド戦略の世界的権威であるデイヴィッド・アーカー氏は述べている。

    「心理学をはじめ諸分野での広範な研究で示されているが、ストーリーは、いかなる形で提示された事実よりも圧倒的に強力であり、20倍どころか200倍もの効果がある」

    デイヴィッド・アーカー[カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール名誉教授]

    アーカー教授はこれまで100本以上の論文を発表し、著作した17冊の売り上げは100万部を超え、18カ国語に翻訳されている。

    そんなアーカー教授はこう続けた。

    「ストーリーは露出を獲得する、ソーシャルメディアを賑わす、情報を伝達する、記憶に定着させる、人を引き込む、説得する、触発する、等々において事実に勝っており、その差は桁違いだ。
    デジタル時代の今日では、ストーリーこそが答えとなるのだ」

    デイヴィッド・アーカー[カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール名誉教授]

    つまりストーリーこそ、あなたが人を動かすリーダーになるための最大の鍵というわけだ。

    あなたはストーリーを
    語れていない…?

    ストーリーテリングはもはや小説家や脚本家だけのものではない。

    今やマーケター、個人事業主、インフルエンサー、そして世界観を発信する全ての専門家がストーリーテラーと化した。

    …はずだった。

     

    辺りを見回してみよう。

    そこにいるはずのストーリーテラーの姿は見えない。

    皆、ストーリーを“語っているつもり“でいるだけなのだ。

     

    あの日、僕は『真珠の耳飾りの少女』を表面的にしか理解できなかった。

    彼女に魅了されながらも「なぜ魅了されるのか」という本質はわからなかった。

     

    現代のストーリーテラーたちも、かつての僕と同じである。

    ストーリーを語れないのは、ストーリーの本質的な知識が足りないからだ。

     

    表面的なテクニックを学ぶほど
    ストーリーの力は失われていく

    テクニックだけで胡散臭くなったストーリーを、あなたも見聞きしたことがあるかもしれない。

     

    これからストーリーテリングの本質を語ろうと思う。

    この先を読み進めば、ストーリーを語れない真の問題と、その解決策を、あなたは理解できる。

     

    まずは真の問題を理解しよう。

    世の中にストーリーテリングの指南コンテンツはたくさんある。

    それなのに、なぜ皆ストーリーを語れないのだろう?

    ストーリーを語れない
    真の問題とは…?

    リーダーとしてストーリーを語るために、乗り越えるべき問題は多い。

    しかし実は世間では見落とされている、真の問題がある。

     

    それは、ほとんどの人が「プロットを語り、テーマが語れていない」ことだ。

     

    プロットとテーマの違いは以下の通りである。

    プロット:ストーリーにおける表面的な出来事を並べた筋書きのこと

    テーマ:ストーリーテラーが最終的に伝えたい価値観のこと

    プロットとは「主人公が何をしたか」「何が起こったか」のように確認できることだ。

    対してテーマとは、オーディエンス(物語の受け手)が、物語に触れた後、「あぁ、やっぱり人生で大事なのは〇〇だよなぁ」と家に持ち帰るのがテーマである。

     

    ストーリーを語る際、あらかじめプロットを決める人をプロッターと呼ぶ。

    プロットを把握してからストーリーを語るのは、正しく行えば有効な方法だ。

    だがプロッターは形式的なプロットばかりを語り、それがストーリーの本質だと勘違いしている。

    プロッターはテーマを忘れてしまった人なのだ。

    心に響いたら、そっとシェアを。
    あなたの1歩は、
    誰かの物語を動かす力がある。
    想いを届ける|シェアする

     

    プロッターは
    人の心を動かせない。

     

    プロッターでいる限り、どんなに必死に物語っても、オーディエンスはあなたを無視するだろう。

    あなたはこの状況に耐えられるだろうか?

    正直、僕なら耐えられない。

     

    その結果、心の中で、

    「もしかしたら自分には語るべき魅力がないのかも…」

    「少し嘘をついてでも人の注意を引くような過激なことを言わなきゃ…」

    …と不安が募っていくはずだ。

     

    そしてその不安をかき消すように、インパクトのある出来事や過激な発言(…つまりプロット)を、さらに頼るようになる。

    まるでハリウッド映画の質は “爆発の火薬量” で決まるとでも言うように。

     

    ストーリーテラーを殺す
    死に至る病

    プロッター思考の悪影響は、ストーリーテリングの技巧に限らない。

    実はあなたの人生に直接影響が出るのだ。

    プロッターはテーマより表面的な “火薬“ に価値があると思い込んでいる。

    その結果、プロッターは自分の(あるいは他者の)人生においても、表面的なものにしか価値を感じなくなってしまうのだ。

     

    だから僕はプロッターを「表面的な形式に価値をおく人」と定義している。

     

    はっきり言うが、僕はプロッターが嫌いだ。

    目先の利益に反射的に飛びつくうえ、他人にもその価値観を伝染させるからだ。

    それは教養のない愚者の行動だ。

     

    例えば、プロッターはストーリーの主人公がお金持ちになったり、社会的地位を手に入れたり、権力を手にすることがゴールだと思っている。

    これも大きな勘違いだ。

    なぜなら、それは承認欲求が源泉だから。

     

    承認欲求に支配されると、満たされることのない欲望の渦に溺れていく。

    他者の注意を引くことに忙しくて、自分の本当の声を忘れていくのだ。

     

    あなたなら分かるだろうが、世の中のほとんどはプロッターである。

    (だから僕は友達が少ないのか…)

    しかし、だからこそ、信念を持ったあなたの力になりたい。

    (そして僕らは友達になれるかもしれない…)

     

    もしかしたら、あなたも
    プロッター思考に侵されるかもしれない

    まるで感染症のように、気づかないうちに感染する可能性はある。

    その日、僕は1人の友人を失うことになる。

    プロッター思考はストーリーテラーを殺す “死に至る病” なのだ。

     

    だがそれも無理はない。

    ストーリーテリングの真実は、常にプロッターたちに隠されてきたからだ。

     

    「この型に当てはめるだけで、人を動かすストーリーが作れます」

    …と言えば「近道を知りたい」という欲求を刺激できる。

    そうして真実が隠されてきた。

    僕はそれが許せない。

     

    今、この場で
    隠された真実を紐解こう

    ストーリーはよく旅に例えられる。

    プロットは旅における地図のようなものだ。

    確かに地図があれば旅はしやすいだろう。

     

    しかし地図を別の紙に描き移しても、旅をしたとは言えない。

     

    そして僕らは、次の事実を知っている。

    「どこにいくのか分からなければ、決して遠くまで行けるものではない」

    ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ[作家・詩人・自然科学者・政治家]

    このゲーテの言葉は単純明快な事実でありながら、非常に深い真実が語られている。

    地図(プロット、型)を持っていても、自分が本当に行きたいのはどこなのか、そして誰をどこに連れていきたいのかが分からなければ、意味がないのだ。

    つまりあなたがストーリーテラーとして伝えたいテーマは何なのか?ということである。

     

    テーマはあなたの人生の旅路を支えてくれる。

    どんな試練があろうと、目指すべき目的地があれば道に迷うことはない。

    世界最強のシナリオ講師であるロバート・マッキーはこう述べている。

    「一般に、偉大な作家は多くのものに手を出さず、ひとつの主題にしっかりと全力を傾ける。
    それはおのれの情熱に火をつけるただひとつのテーマであり、生涯をかけて様々に形を変えて追い求めるテーマだ。

    たとえばヘミングウェイは、死とどう向き合うかという問題に心を奪われていた。
    親の自殺を目撃して以来、それは作品のみならず、人生の中心的テーマであり続けた。
    戦争で、スポーツで、狩猟で、ヘミングウェイは死を追求しつづけ、ついにはみずから猟銃をくわえて、死を知ることになる。

    チャールズ・ディケンズは、父親が借金の不払いで投獄された過去を持つため、『デイヴィッド・コパフィールド』、『オリバー・ツイスト』、『大いなる遺産』と、亡き父を探し求める孤独な子供を繰り返し描いた。

    モリエールは、17世紀のフランスの愚かさと堕落に批判的な目を向けて戯曲を書き続けた。
    『守銭奴』、『人間嫌い』、『病は気から』といった作品名は、人間のいやな面を並べあげたかのようだ。

    どの作家も自分のテーマを見つけ、それが作家としての長い旅路を支えた」

    ロバート・マッキー[シナリオ講師]

     

    プロットは「なにをするか」を意味する。

    そしてテーマは「なぜそれをやるのか」を意味する。

    プロットとテーマが融合したとき、ブランドが生まれるのだ。

    あの2人の巨人を見れば、あなたも分かるだろう。

     

    なぜ、あの2人は
    僕らを魅了するのか?

    ブランディングの2人の巨人。

    AppleとNIKEを見てみよう。

    彼らが商品やサービスを通して語っているテーマは、次の有名なコンセプトによって表現されている。

    Apple:Think different
    NIKE:just Do it

    このテーマがプロット(商品、活動)に意味を与えるのだ。

    だからMacBookはノートパソコンではなく、「旧態依然とした社会に挑む個人の力を増大するツール」に変わる。

    NIKEのシューズはランニングシューズから、「僕らを勝利へ挑戦するアスリートに変える武器」になるのだ。

     

    彼らは “僕らをどこへ連れていくか” を物語っている。

    Appleはテクノロジー企業であり、NIKEはスポーツ用品を扱う企業だ。

    だが彼らはただの企業ではない。

    優れたストーリーテラーである。

     

    旅を始めるには、目的地を決めなければならない。

    あなたが物語るために、あなたのテーマを見つける必要があるのだ。

    ではテーマはどうやって発見すれば良いのだろう?

     

    ストーリーテラーと
    プロッターを
    別つものとは…?

    あなたのテーマを発見するために必要なことは何なのか?

    今ここでハッキリさせよう。

    それは「自分のキャラクターを知ること」だ。

     

    ストーリーの重要な要素であるプロットとテーマ。

    その2つを同時に表現するのがキャラクターなのだ。

     

    テーマとはボーッと考えて突然思いつくものではない。

    自分を深く掘り下げ、自問自答し、観察し、追い求め、自己理解を深めた先に見えてくる。

    テーマを知ることは「自分とは何者か」を知ることでもある。

     

    世の中にはたくさんのストーリーブランディングの指導がある。

    しかしキャラクターという視点で語っている人は、僕が知る限り見たことがない。

    オーディエンスが共感するのは出来事ではなく、出来事に奮闘するキャラクターなのだ。

     

    キャラクターはストーリーブランディングの最後のピースにして、最も意義深い概念だ。

    なぜなら、今まであなたが学んだストーリーブランディングの知識に、意味と個性を与えるものだから。

    そして自分自身を深く理解できれば、あなたの人生の舵取りが、今まで以上にうまくいくようになる。

    自分の特性、強み、避けるべきこと、他者へ与えることができる価値について、今まで以上に自分を知ることができるのだから。

     

    洗脳から先導へ

    もしあなたが自分のキャラクターを確立できたら、何が変わるだろう。

    ブランディングの観点で言えば、あなたはTribe(トライブ:部族)を獲得できる。

    トライブとは、マーケティングにおいて「共通の理想世界へ共に歩いていく仲間」のことを指す。

     

    人間には帰属欲求という本能がある。

    「自分の個性を強化してくれる集団に属していたい」と望む深層心理だ。

    僕らは本能的に、自分に合うトライブを渇望しているのだ。

     

    つまりキャラクターを確立し、正しく表現できれば、自然と人は集まる。

    しかも集まった人は、損得ではなく、あなたと理想を共有した強い繋がりを長期的に保ってくれる。

    あなたという存在が、彼らのアイデンティティの一部になるからだ。(世の中には特定のブランドロゴをタトゥーとして身体に刻む人々もいる!)

     

    オーディエンスは自分の個性を代弁してくれるキャラクターを求めている。

    彼らは自分を先導してくれるリーダーについていきたいのだ。

    そう、あなたについていきたいのだ。

     

    一方、プロッターは表面的な欲求と恐怖に訴えかける。

    オーディエンスのアイデンティティより自分の利益に目を向けるからだ。

     

    プロッターは必死に自分を誇張し、オーディエンスを煽って洗脳する。

    ストーリーテラーは自然体で、オーディエンスを鼓舞して先導する。

    プロッターはクレーマーを作り、ストーリーテラーはトライブを作るのだ。

     

    利益のために洗脳するのではなく、どこへ先導するのかを物語るのがストーリーテラーである。

     

    プロッターの末路…

    インターネットの発達により、情報の価値は下がる一方だ。

    誰もが情報を無料で得ることができるのだから。

    さらにグローバル化、ビジネスのオンライン化・AI化に伴い、労働者の価値も下がる。

     

    そんな時代に、自ら価値を生み出すことができないプロッターはどうなるだろう?

     

    プロッターは他人に使われ続け、いずれは誰からも使われない日が来るだろう。

    ある日、こう思うかもしれない。

    「俺って何のために存在してんだろ…」

    残念ながら、そう気づいたときにはもう遅いのだ。

     

    全ては自分のキャラクターを無視していることが原因である。

     

    ストーリーテラーに必要な
    3つの視点とは?

    そこで『TELLING』では、キャラクターという視点からストーリーテリング(そしてストーリーブランディング)を再構築していく。

     

    大切なのは十分な知識だ。

    誰も言わないが、中途半端な知識は毒である。

    哲学者フランシス・ベーコンは「知は力なり」と言ったが、知識は身を滅ぼす力も持っているのだ。

    包丁は正しく使えば命を繋ぐ道具だが、使い方を間違えば命を奪う道具にもなるように。

     

    プロッターは中途半端な知識で身を滅ぼしている典型である。

     

    『TELLING』では脱プロッターし、トライブを導くストーリーテラーになるための知識を共有していく。

    具体的には僕が意識している「ストーリーテラーの3つの視点」でストーリーテリングを学んほしい。

    それが以下の3つの視点である。

    Characterizing:真の自己の発見
    Marketing:自己を行動によって物語る
    Writing:自己を言葉によって物語る

    それぞれの視点について、簡単に解説しよう。

     

    Characterizing:真の自己の発見

    「汝自身を知れ」

    ソクラテス[哲学者]

    キャラクタライズとは「特徴づける」を意味する言葉だ。

    自分をキャラクター化させるとイメージしよう。

    だがこれはウケのいいキャラを演じることではない。

    キャラクタライズとは、真の自己を知り、正しく表現することである。

     

    あなたという人間はこの世に1人しかいない。

    であるなら、あなたを正しく表現できれば世界にひとつのメッセージが出来上がるはずだ。

     

    『TELLING』では自己理解のための思考フレームを知識として共有していく。

    知るためではなく、使うための知識だ。

    僕があなたのキャラクターを発見するのではない。

    あなたが真の自己を発見するのだ。

     

    Marketing:自己を行動によって物語る

    「愛とはお互いに向き合うことではなく、同じ方向を向くことである」

    アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ[作家]

    僕にとってマーケティングとは「市場の創造」でも「販売促進のための工夫」でもない。

    僕にとってマーケティングとは「自己と世界の関係を構築すること」である。

    つまりトライブを構築するための視点だ。

     

    『TELLING』では、理論と事例をもとに、マーケティングの視点でストーリーテリングを理解していく。

     

    プロッターがよく犯す間違いがある。

    それは「物語調コンテンツ」こそがストーリーブランディングだと思い込むことだ。

    だがそれはテクニックのひとつでしかない。

     

    ストーリーとは言葉と行動で表現しなくてはいけないのだ。

    優れた役者はセリフだけでなく、表情・声のトーン・仕草などを駆使して役柄を表現するのと同じである。

    NIKEは勝利を望むアスリートのために、スポーツジムを作るかもしれない。

    だがジャンクフードが大好きな人のためのドーナツ店を開くことはないだろう。

    ブランドは行動によって、物語っているのだ。

    「自分は棚に並ぶ商品以上の存在であるという事実に企業は目覚めなくてはならない。
    企業は振る舞いでもあるのだ」

    ロバート・ハース[ リーバイ・ストラウス社名誉会長]

     

    あなたも自分のキャラクターを理解することで、正しい振る舞いができるようになる。

    自分が語ったストーリーを実際に生きよ。

    そして生きたストーリーのみを語るべきである。

     

    Writing:自己を言葉によって物語る

    「ペンは魂の舌である」

    ミゲル・デ・セルバンデス[作家・詩人]

    ストーリーテラーにとって最大の武器とは何か?

    それは言葉である。

    言葉ほど素早く、そして大きく心を動かすものはない。

     

    人類は太古の時代から言葉の力を知っている。

    歴史に名を刻んだ偉人たち、さらには独裁者に至るまで、皆言葉の力を借りてきた。

     

    言葉を支配する者が、自分を、そして世界を制する。

     

    この言葉の力を、あなたのキャラクターを表現するために、どう使えばいいのかを学んでいこう。

    セールスや説得ではなく、キャラクターを物語り、トライブを構築するためのライティングの技巧である。

     

    ストーリーテラーの3つの視点は、行動と言葉の両面でキャラクターを表現するための視点だ。

    この3つは影響し合って1つのストーリー(世界観)を構築する。

     

    さて、ここまで読んでくれたあなたに、改めて問いたい。

    僕らは何のために物語るのだろう?

    あなたは何のために
    存在するのか?

    かつてルネ・デカルトという哲学者がいた。

    デカルトはこの世界で絶対的に確かなものを探すことに、その生涯を捧げた。

    そこでデカルトは「この世は全て夢かもしれない」と、あらゆることを疑ったのだ。

     

    しかし、1つだけ疑えないものがあった。

    それは「夢かもしれない」と疑う自分の意識の存在である。

     

    デカルトは「自分の意識の存在は疑いようがない」ことを発見したのだ。

    そして彼はこの発見を、ある言葉にして僕らに残してくれた。

    それが「我思う、ゆえに我あり」である。

     

    僕はこの言葉をアレンジして、友人のあなたへ贈りたい。

    ストーリーテラーとして影響力を持つには、「思う」だけではだめなのだ。

    語らなければ、僕らはストーリーテラーになれない。

     

    だからこそ僕は言いたい。

    「我物語る、ゆえに我あり」と。

     

    物語るからこそ、僕らは自分の存在意義を見出せる。

    ストーリーテリングは売上のためではなく、あなたの存在を証明するためにあるのだ。

     

    僕もこの活動を通して、自分の存在意義を見出したい。

    あなたの力になりたいと思うが、実はそれはヒーローのような自己犠牲の想いではないのだ。

     

    僕はヒーローではない。

    むしろ、美術館で出会った少女に怯えるくらい、弱い人間だ。

    そんな僕が
    この記事を書いている
    個人的で恥ずかしい理由…

    本音を言おう。

    僕がストーリーの知識を伝えることで、あなたはブランドを構築し、リーダーになれるだろう。

    そうすれば、あなたは僕に感謝してくれるかもしれない。

    そう、僕はあなたに感謝されたい。

    そのとき、僕は人生の意義を感じることができるだろうから。

     

    あなたの物語を、少しでも良い方向へ進めることができたら、それが「僕が生きた証」になると、僕は本気で思っている。

     

    僕は、嘘の自分ではなく、本当の自分を生きる人でありたい。

    そうすればいつの日か、もう一度あの少女の前に立ったとき、胸を張って彼女の瞳を見ることができる気がするのだ。

     

    あなたもストーリーテリングを学べば、あなたの生きた証を、誰かの心に刻むことができる。

    僕はそう信じている。

     

    大丈夫、あなたにも語るべきストーリーはある。

    あなたの友人として、僕はそれを証明したい。

    そのための知識を、これから一緒に学んでいこう。

     

    エピローグ
    〜ある画家の物語〜

    今から300年以上前、1人の男がオランダのデルフトという街に生まれた。

     

    彼は大人になるにつれ、物語画家(神話や宗教上の物語を描く画家)になりたいと思うようになった。

    若い画家は技巧を磨き、物語画家への道を歩むことになる。

     

    しかし、人生とは奇妙なものだ。

     

    当時、物語画を注文するのは、大きな教会などが一般的だった。

    だが若い画家が住んでいたデルフトという街は、市民の街だったのだ。

     

    市民は教会に飾る巨大な物語画より、自宅に飾る小さな風俗画(市民の生活を描いた絵)を求めた。

    背に腹は変えられない。

    若い画家は、生活のために風俗画を描くようになった。

     

    画家として生活していけるのだ、それで十分だろう。

    この若い画家はそう思ったかもしれない。

    生きていくためには、自分に嘘をつくことも必要だったのだ。

     

    それは、いつものように筆を握ったときだった。

    「自分が描きたいものを描かなければ、画家になった意味がない」

    彼はそう思ったのかもしれない。

    物語画への熱意を忘れることはできなかったのだ。

    そこから彼の試行錯誤が始まった。

     

    若い画家は、自分が本当に描きたいものは何かを探究した。

     

    彼は自問した。

    なぜ物語画を描きたいのだろう?

     

    もしかしたら神話や宗教を物語る信仰心こそ、彼が見出した人間の本質だったのかもしれない。

    その信仰心は、日常にも神聖な意味を与えるのだと、彼は気づいたのだ。

     

    そして額縁の中に、1人の少女を描いた。

     

     

     

     

     

    この少女には謎がある。

    印象的なのは少女の青いターバンだ。

    このブルーの原料は「天空の欠片」と呼ばれたラピスラズリ。

    ラピスラズリは当時、金(gold)と同等の価値を持っていた。

    そのため、絵画に使用する場面は、聖母マリアの衣服などに使われた色だった。

     

    どうしてフェルメールは、こんな高価な色を使ったのだろう?

     

    もしかしたらフェルメールにとって、この少女は聖母マリアだったのかもしれない。

     

    日常にある神聖な欠片。

    それは僕らの信仰心が物語ることで意味を持つ。

    この少女こそ、フェルメールの「生きた証」なのだ。

     

    フェルメールは風俗画家であり、物語画家であり、ストーリーテラーだった。

     

    自分に嘘をつき、風俗画を描く毎日。

    その中で自分の情熱に気がついたとき、フェルメールはこう思ったに違いない。

     

    __「ちくしょう、やっぱりそうか」

     

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    情熱のある専門家へ。
    “あなたらしさ”を活かす物語の伝え方を発信。
    「我物語る、ゆえに我あり」を理念に、“売る”ためではなく、“あなたが生きた証を残す”ためのストーリーテリングを提唱。
    型にはまるより、型を使いこなそう。
    そしてあなたの知識と技術を「世界観」に変え、共感するファンと繋がろう。
    そんなあなただけのストーリーブランディングを共に紡ぎます。

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