ヘミングウェイを激怒させた言葉は、あなたのストーリーブランディングをどう変えるか?

    1. Marketing

    くそくらえ。

    そう呟きながら、1人の若い作家がパリの小道を歩いていた。

    彼女の“あの発言”に納得できるわけがなかった。

     

    今から約100年前のことだ。

    この作家の名前はアーネスト・ヘミングウェイ。

    のちにノーベル文学賞作家となる。

     

    若きヘミングウェイには、どうしても納得できない言葉があった。

    だがその言葉は、現代の僕らを予言する言葉でもあったのだ…。

     

    この興味深い事実を、僕は記事にせずにはいられなかった。

    現代の僕らが「なにを物語るべきか?」を理解するための重要なヒントが、100年前にヘミングウェイを怒らせた言葉に隠されているのだ。

    これに気づいたとき、僕は全身の毛が逆立った。

     

    その言葉を知るには、ヘミングウェイが「くそくらえ」と呟いた数分前に時を戻す必要がある。

    事件が起きた時場所は…

     

    数分前、ヘミングウェイはガートルード・スタインという女性作家の家にいた。

    名画が飾られたその空間に、ヘミングウェイは魅了された。

    そこはまるで美術館のようだった。

     

    大きな暖炉、美味しいものやお茶、そして蒸留酒もあった。

    ヘミングウェイはその蒸留酒を飲むと、舌から鼻に果実の香りがぬけ、体の芯から温まるのを感じた。

     

    スタインは身長は低いが、農婦のようにどっしりと大柄な女性だった。

    ヘミングウェイはスタインから、芸術について、作家について、創作について、あらゆることを学んでいた。

    スタインの家に通うことが、いつしかヘミングウェイの習慣になっていたのだ。

     

    その日、スタインは
    ヘミングウェイにこんな話をした

     

    とある自動車整備工場の、若い整備工の話だった。

     

    当時スタインが使っていた車を、整備工場に修理に出したときのこと。

    若い整備工(彼は第一次大戦に従軍した経歴をもっていた)の手際が悪かったのだという。

    そのため若い整備工は、整備工場の主人から叱られていた。

    「お前たちはみんな、ダメな奴らだな」

    と主人は言ったそうだ。

     

    「あなたたちがそれなのよね。こんどの戦争に従軍したあなたたち若者はね」

    スタインはヘミングウェイに言った。

    そして続けて発言した次の言葉が、ヘミングウェイを憤慨させることになる。

     

    「あなたたちはみんな、失われた世代(ロスト・ジェネレーション)なのよ」

     

    僕らが失ったもの…
    そして現代人が
    本質的に求めているものとは…

     

    「失われた世代」

    この言葉ほど、現代を表現した言葉はないだろう。

    あなたはまだピンとこないかもしれない。

    だがこの記事を最後まで読めば、僕らが失ったものが、あなたにも見えるはずだ。

    それは、現代人が本質的に求めていること(取り戻したいこと)を理解することを意味する。

     

    現代人の僕らが失ったものとは何か?

    現代を知るには、過去を理解すればいい。

    僕らが失ったものと、ヘミングウェイたちが失ったものは、同じものだからだ。

     

    “失われた世代”が
    失ったものとは…

     

    100年前、ヘミングウェイは第一次大戦を経験した。(あの若い整備工と同じように)

    当時、戦争は時代を切り開く輝かしいイメージだった。

    そして自分も戦争に参加することで、新たな時代を築く英雄になるのだと、ヘミングウェイも信じていた。

    …戦地に行くまでは。

     

    それは地獄のような経験だった。

    昨晩語り合った仲間が、目の前で惨殺されるのを、瞳に焼き付けられた。

    すぐに終わると思っていた戦争は、いつまでも続き、終わりなど見えなかった。

    死体の腐敗臭と火薬の匂いが、常に鼻にこびりついている。

     

    俺はなにをやってるんだ。

    新たな時代を切り開く英雄になるためにここに来た。

    この戦争は、本当に時代を作るのか?

    ヘミングウェイはそう思い始めていた。

    胸に抱いていた戦争の姿など、もう信じることができなかった。

     

    ヘミングウェイは、今まで持っていた価値観を疑いはじめた。

    「戦争は俺たちを英雄にし、新時代を切り開くもの」という物語を失ったのだ。

    そこに残ったのは、絶望と虚無だけだった。

     

    それが若きヘミングウェイが「失われた世代」と呼ばれた所以である。

    そして信じる物語を失ったのは、ヘミングウェイだけではない。

    現代に生きる僕らも同じなのだ。

     

    あなたが信じている物語は?

     

    今、あなたはどんな物語(価値観)を信じているだろうか?

     

    僕らの信じている物語の最終的なゴールは「幸福」だろう。

    そのためには「〇〇を信じれば幸福になれる」という物語が必要なのだ。

    だから歴史の中で、あらゆる物語が信じられてきた。

     

    神(宗教)を信じれば、幸福になれるという物語。

    理性を信じれば幸福になれるという物語。

    戦争で英雄になることが幸福だという物語。

    良い大学を出て、大企業に就職することが幸福だという物語。

    科学を突き詰めれば幸福になれるという物語。

     

    あなたはどの物語が
    正しいと思うだろう?

     

    実は「どの物語が正しいか」は本質ではない。

    大切なのは「皆が信じれる物語があること」それ自体なのだ。

    なぜなら物語を他者と共有することで、僕らは人々と繋がることができるから。

     

    例えば、キリスト教徒はキリスト教徒同士で仲間意識を持つだろう。

    キリスト教という同じ物語を共有しているからだ。

    僕なら「情熱を追うことで人生は豊かになる」「本質的な知識が人生を豊かにする」といった価値観を持っている人には、強烈に惹かれるし、実際僕の周りにはそういう人が多い。

     

    特定の物語を信じることは、特定の人と繋がることでもある。

    それは僕らが本能的に求めていることなのだ。

     

    孤独が怖い?
    その原因は深層心理に隠れている

     

    人間には帰属欲求がある。

    人と繋がりたいという強力な欲求だ。

    僕も心から共感できる友人を作りたいと思っているし、あなたと友人になれたら嬉しいと思う。

     

    僕らは孤独に耐えられない弱い生き物なのだ。

    そして「人とのつながり」を本質的に支えているのが、物語の共有である。

     

    だが現代の僕らはどうだろう?

     

    皆が共通して信じている物語はあるだろうか?

     

    宗教や理性について考えている人がどれだけいるだろう?

    戦争はむしろ無い方が平和だと考えているし、大企業神話も崩壊している。

    科学を突き詰めた結果、その科学に仕事を奪われると怯える始末だ。

     

    フランスの哲学者ジャン・フランソワ・リオタールは、そんな現代を「大きな物語の終焉」と表現した。

    皆が共通して信じる価値観(大きな物語)が失われたのだ。

    それは人々との繋がりが失われたことを意味する。

    僕らも “失われた世代” なのだ。

     

    現代人は人々と繋がるために、信じられる物語を欲している。

    だが現代には、その物語がない。

     

    例えるなら、広い大海原で船が沈没してしまったようなもの。

    船という物語があれば、船に乗り込み、人々と共に海を航海できる。

    しかし今は1人で海を泳がなければいけない。

     

    そんな状況になったとき、あなたはどう感じるだろう?

    きっと不安と孤独に押しつぶされそうになるのでは?

    そして不安と孤独を解消したいと思いながら、この広い大海原を彷徨うしかない。

    それが現代人の姿なのだ。

     

    失われた世代が
    渇望するものとは?

     

    これから新たな船(大きな物語)は生まれるだろうか?

    可能性は低いだろう。

    SNSで多様な視点が発信されている時代に、大きな物語は生まれない。

     

    人々は物語による繋がりを失った。

    これは悲劇だろうか?

    僕はそうは思わない。

     

    なぜなら、次の真実を知っているからだ。

     

    「ストーリーテリングの力とは、まさにこういうものだ。
    __他のすべてが崩れ去った場所に橋を架ける」

    パウロ・コエーリョ[作詞家、小説家]

     

    そう、「大きな物語が終焉した時代」だからこそ、ストーリーテラーが求められるのだ。

     

    物語を失った人が渇望するもの。

    それは物語である。

    これは明らかな事実だと思わないだろうか?

     

    現代人は人々と繋がるための
    「信じられる物語」を渇望している

     

    それは大きな物語でなくても構わない。

    小さな物語でも、自分の居心地の良い人々と繋がることが大事なのだから。

     

    そう、大きな物語が失われた現代は、小さな物語が無数に生まれる時代である。

    価値観が多様化し、小さな物語を共有する小さなコミュニティが大量発生しているのだ。

     

    例えば、物語の影響力が「水の波紋」だとしよう。

    旧社会では大きな石(物語)をボチャン!と水面に投げ入れ、大きな波紋を作った。

    だが現代は、たくさんの小石を投げ入れ、無数の波紋があちらこちらで発生している状態なのだ。

     

    小さな物語が乱立しているからこそ、僕らは信じる物語を自由に選ぶことができる。

    誰もが自分の信じる物語を必死に探しているのだ。

    どこかに自分に合った波紋があるはずだ…と。

     

    だからあなたも物語り
    あなたのトライブを構築するべきだ

     

    オーディエンスはあなたの物語を求めているし、あなたは彼らを導く必要がある。

    それが現代のストーリーブランディングの意味であり、ストーリーテラーの在り方なのだから。

     

    トライブとは部族を意味し、マーケティング業界では「共通の興味関心によって繋がる集団」という意味を持つ。

    だが、僕の定義は少し違う。

     

    僕にとってトライブとは「共通の理想世界へ共に歩いていく仲間」のことだ。

    興味関心が共通しているだけでなく、その先の理想世界を共通し、実際にそこに向かって歩いていく仲間をトライブと定義している。

     

    この考え方は僕のオリジナルではない。

    僕のトライブの定義は、木坂健宣さんのコミュニティ論を参考にした。

    木坂さんは日本最高峰のコピーライターの1人で、WEBビジネス業界では重鎮的存在である。

    僕は彼のコミュニティ論に深く共感したため、彼のコミュニティの定義を引用させてもらった。

    ただコミュニティと表現すると、会員制や物理的なグループをイメージする人が多いため、僕はあえてトライブと表現したい。

     

    トライブとはあくまでも精神的な繋がりだ。

    ユダヤ人が世界中に散らばっていたとしても、そして具体的なグループを形成していなくても、ユダヤ人というトライブの一員であるのと同じである。

     

    なぜトライブが必要なのか?
    その3つの理由とは?

     

    ここからはさらに具体的なトライブの必要性を語ろう。

    トライブが必要な3つの理由は以下の通りだ。

    1. オーディエンスが求めているから
    2. 従来の古いマーケティングやセールスが不要になるから
    3. 生きる意義を見出すことができるから

    ひとつずつ掘り下げてみよう。

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    誰かの物語を動かす力がある。
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    1.オーディエンスが求めているから

    これは冒頭で語った通りである。

    人間には帰属欲求があり、人々は繋がりを求めている。

    だが、現代は人々を結びつける「大きな物語」が失われているのだ。

     

    人と人をつなぐ接着剤の役割を持つ物語を、僕らは無意識的に求めている。

    「でもそれって今後もずっと求めらるの?」

    もちろんだ。

    いやそれ以上かもしれない。

    なぜなら、“今後”どころか、太古の時代から僕らは物語を求め続けてきたのだから。

     

    この事実を明らかにしたのは、ヘブライ大学で教鞭を振るっているユヴァル・ノア・ハラリである。

    ハラリによると、ホモ・サピエンスが世界征服した鍵は「虚構(フィクション)を信じる力」にあるという。

    つまり物語を信じる力だ。

    世界的ベストセラー『サピエンス全史』の中で、ハラリはこう述べている。

    「虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。

    聖書の天地創造の物語や、オーストラリアの先住民の「夢の時代(天地創造の時代)」の神話、近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。
    そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。

    アリやミツバチも大勢でいっしょに働けるが、彼らのやり方は融通が利かず、親近者としかうまくいかない。
    オオカミやチンパンジーはアリよりはるかに柔軟な形で力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでなければ駄目だ。

    ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。

    だからこそサピエンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ」

    ユヴァル・ノア・ハラリ[歴史学者]

     

    この事実は、物語の力を信じている僕にとって、大きな拠り所のひとつになった。

    ハラリが言うように、ホモ・サピエンスは物語によって集団を統一したことで、自分たちより大きな相手に勝ってきたのだ。

     

    帰属欲求はこのホモ・サピエンスの生存戦略に根ざしていると、僕は考えている。

    なぜなら人間の脳の構造は15万年前から変化していないからだ。(これは脳科学で明らかになっている)

    人々が繋がりを求めるのは、生き残るための太古からの知恵である。

    そしてそのための鍵が物語だった。

     

    かつて人類は神話によって文化を築いた。

    現代まで「大きな物語」を共有することで、僕らは繁栄した。

    それは虚構(フィクション)を信じる力があってこそである。

     

    例えば僕らは日本人だが、国家(日本)という概念は人間が生み出したフィクションに過ぎない。

    同じようにブランドも、人間の虚構を信じる力が生み出すのだ。

    誰も国家という概念を目にしたり触れたりすることができないのと同じだ。

     

    ルイ・ヴィトンの鞄に触れることはできるが、ルイ・ヴィトンという概念に触れることはできない。

    つまりブランドとは概念であり虚構(フィクション)なのだ。

     

    神話の時代にはシャーマンなどがストーリーテラーとなり、人類をまとめた。

    「失われた世代」である現代では、ブランドがストーリーテラーの役目を担っているのだ。

    「共通の理想世界」というビジョンを提示して物語を語る人を、僕らは求めているのだ。

     

    ビジョンとはフィクションである。

    これは「嘘をつけ」ということではない。

    「ソリューション(問題解決)を超えた、より大きな意味を与えろ」ということである。

     

    ビジョンによって繋がっている集団がトライブなのだ。

    トライブのメンバーはトライブに参加していることに意味を感じ、意味を感じられるトライブを求めている。

    トライブを生む物語こそが、人類が得た最強の武器である。

    「私たちとチンパンジーとの真の違いは、多数の個体や家族、集団を結びつける神話という接着剤だ。
    この接着剤こそが、私たちを万物の支配者に仕立てたのだ」

    ユヴァル・ノア・ハラリ[歴史学者]

    僕はこの「トライブを構築するストーリー」を、トライバルストーリーと呼んでいる。

    トライバルストーリーを語ったとき、ストーリーテラーはリーダーとなるのだ。

     

    人々がトライバルストーリーを求めていることは分かった。

    ではストーリーテラーにとってトライブは何を意味するだろう?

    次はよりビジネス的な視点でトライブの必要性を語ろう。

     

    2.従来の古いマーケティングやセールスが不要になるから

     

    トライブは古いマーケティングを葬り去る革命児だ。

    トライブの視点で語るブランディングとは「セールスをしやすくすること」ではなく、「セールスを不要にすること」である。

     

    「セールスをしないでどうやってサービスを売るんだよ」

    …と思うかもしれない。

    気持ちは分かるが、その考えは捨てよう。

     

    従来の考えでセールスとは「説得」である。

    あらゆる心理テクニックを駆使して、相手から「イエス」を引き出してく方法だ。

     

    だがその場で「イエス」を引き出すことができても、オーディエンスと長期的な関係を築くことはできない。

    なぜなら従来のセールスは、一時的に感情を動かす方法だからだ。

    一時的な「イエス」は、一時的な関係しか生まない。

    一瞬の洗脳でしかないのだ。

     

    トライブの定義をもう一度読んでほしい。

    「共通の理想世界へ共に歩いていく集団」

    トライブは説得するのではなく、そもそも理想世界を共有している人を、メンバーに迎えるのだ。

     

    そしてトライブとは長期的な関係を前提にしている。

    オーディエンスは「理想世界へ行くためにあなたが必要だ」と思えるうちは、あなたから離れることはない。

    ストーリーテラーはトライブを洗脳するのではなく、先導するのだ。

    オーディエンスは自分を先導してれる人から離れることはない。

     

    そしてトライブが構築できたら、セールスにコストを割く必要はなくなる。

    なぜならトライブを観察すれば、メンバーが求めていることがすぐに分かるからだ。

     

    そしてトライブのメンバーは、理想世界へ近づくために必要なものを提示されたら、喜んでお金を払う。

    Appleの新商品の発売日に、表参道のAppleストアを観察すれば分かるだろう。

    Appleストアに早朝から並ぶ彼らは、店頭で心理テクニックを駆使した長々としたセールス(説得)を受けてから、商品を買うか決断しているだろうか?

    アイドルやアーティストのファン限定チケットが販売される際、ファンは「このチケットを購入すべき7つの理由」などと説得されたから購入しているのだろうか?

    いや違う。

    彼らは自ら喜んで購入しているのだ。

     

    僕自身、信頼している人の教材や講座は、セールスされなくても買っている。

    10万円以上の講座を即決するほどだ。

    彼らのビジョンに共感し、彼らに学ぶことで、僕も成長できることに喜びと充実感を感じている。

    僕は彼らのトライブの一員なのだ。

     

    この事実から分かるように、トライブが構築されたらセールスに時間を割く必要がなくなる。

    それはつまり、トライブとのコミュニケーションや、商品のクオリティを高める時間にコストを注げるということだ。

    そうすればさらにトライブに価値を提供することができる。

    結果としてトライブはさらにコミットしていき…と好循環が生まれるわけだ。

     

    洗脳から先導へ。

    この言葉を絶対に覚えてほしい。

     

    トライブはメンバーと共有する理想世界が全ての基盤になる。

    理想世界を物語り、理想世界へ先導することでトライブは構築されるのだ。

     

    つまり「あなたの理想世界はなに?」という問いから、全ては始まる。

    自分の理想世界を定義することは、ビジネスを超え、あなたの人生に大きく影響する。

    次はあなた個人にとって、トライブがなぜ必要なのかを見ていこう。

     

    3.生きる意義を見出すことができるから

     

    トライブを構築する過程で、あなたは生きる意義を見出すことができる。

    なぜなら、ストーリーテラーにとってトライブとは「真の自己を表現する場所であり、あなたを求める人が集う場所」だからだ。

     

    僕が考えている幸福の最小単位には、2つの条件がある。

    • 本当の自分でいること
    • 自分が求められる環境があること

    トライブはこの2つの幸福の条件を、同時に満たすことができる。

     

    逆に言えば、この2つの条件が満たされなければ、幸福を感じることはできない。

    しかし、なんとなく生きていると、この2つの条件とは真逆の生き方をすることになる。

    この事実に、個人的に危機感を感じている。

     

    まず誰もが、本当の自分を知らずに生きている。(そして死んでいく)

    外部から社会的な役割を押し付けられ、その役割に徹して生きているのだ。

    そしていつしか、それが本当の自分だと錯覚するようになる。

    恐ろしい話だ…。

     

    他人から仮面を被せられ、自分の顔を忘れてしまうのだ。

    その仮面は、肩書き、常識、男だから、女だから、年を取りすぎている、若すぎる、父親として、母親として、など名前をたくさん持っているが、どれも仮面であることに変わりはない。

    これは社会的な役割として、いつしかあなたに被せられた仮面にすぎない。

     

    この仮面も、人間が生み出した虚構(フィクション)だ。

    そう、フィクションなのだ。

    ただの「思い込み」である。

     

    あなたは今現在、他人が描いたフィクションを生きている。

    だが、あなたは他人の物語ではなく、あなたの物語を生きることができる。(それに、生きるべきだ)

    まさに 「我物語る、ゆえに我あり」なのだ。

     

    この仮面を外す作業を、僕は キャラクタライズと呼んでいる。

    トライブを構築する際の、重要な要素だ。

    興味があればcharacterizingカテゴリーの記事を読んでくれたら嬉しい。

     

    ただ、本当の自分が世界に1人ぼっちで存在するだけでは、まだ足りない。

    仮面の下のあなたの顔を見てくれる人、あなたを求めてくれる人が、あなたには必要だ。

    そのためには「本当の自分」と「他者」を繋ぐ工夫をしなくてはならない。(これがMarketingの視点だ)

    トライブはそのための環境にもなる。

     

    ではトライブのメンバーはどのように集めるのか?

    細かい方法は、今後の記事で紹介するが、重要なのは「真の自己」をコンセプト化することだ。

    そのコンセプトを理想世界として語るのである。

     

    キャラクタライズの視点で自分の特性、強み、価値観を理解した上で、自分をこう表現してみよう。

    「自分が関わることで、〇〇なあなたを△△へ導くことができます」

    そうすればこのコンセプトに惹かれた人が、あなたに集まってくる。

    集まった人は、理想世界を共有していくので、 トライブが構築されるのだ。

     

    実際に発信する際は、テンプレートに当てはめた文章をそのまま書くわけではないだろう。

    実際の表現は、あなたのキャラクターに沿った表現にするべきだ。

    そのために、CharacterizingとWritingの技術が必要になるわけである。

     

    トライブを構築するためには、定義の通り「共通の理想世界へ歩いていく」という物語が必要だ。

    つまりストーリーブランディングとは、トライバルストーリー(=トライブを構築するための物語)を語り続けることなのだ。

     

    プロッターが言うような、

    「商品の背景物語を語る」

    「自分の経歴や実績を物語る」

    だけがストーリーブランディングではない。

     

    オーディエンスに生きる指針となる価値観を共有することが大切だ。

    生きる指針が、人生の拠り所となり、僕らの世界観を構築するからだ。

     

    僕らは生きる指針を、潜在意識で強く求めている。

    仮に、人生の拠り所となる物語を失うと、どうなるのだろう?

    この問いを紐解くために、また100年前に時を戻そう。

     

    ヘミングウェイの誤り

     

    くそくらえ。

    100年前、ヘミングウェイはどうしても納得できなかった。

    「失われた世代」なんて言葉は受け入れられなかった。

     

    その真意はヘミングウェイ本人にしか分からないだろう。

    だが僕らは歴史を振り返ることができる。

    100年前に生きたヘミングウェイは、戦争によって青春時代を、祖国への信頼を、生きる拠り所を、確かに失っていた。

     

    その喪失感を取り戻そうと、ヘミングウェイは小説を通して、「男らしさ」「野性の力強さ」を表現し続けた。

    また、彼自身も力強い男らしさの象徴として生き続けた。

    まるで力強さを心の拠り所とするように。

     

    だが神は時に無情である。

    再びヘミングウェイに試練が降りかかった。

     

    1年のうちに、2度の航空機事故にあったのだ。

    同年にヘミングウェイはノーベル文学賞を受賞するのだが、事故による重症で、授賞式に出ることはできなかった。

     

    それからというもの、今までヘミングウェイの売りでもあった、肉体的な強靭さや、男らしい行動は見られなくなる。

    “パパ・ヘミングウェイ”の愛称で呼ばれた力強いヘミングウェイは、徐々に失われていった。

     

    戦争によって拠り所を失い、またしても事故によって拠り所を失ったヘミングウェイ。

    彼は人生の迷子になった。

    もう自分が誰なのか、わからなくなったのだ。

     

    ある日、ヘミングウェイは猟銃を手にした。

    そして銃口を咥え、自らの足の親指を引き金にかけた。

    パパ・ヘミングウェイの物語に、自分自身でピリオドを打ったのだ。

     

    奇しくもヘミングウェイの父親もまた、銃による自殺だった。

    力強さの象徴である父親と同じ道を辿ることが、彼の最後の抵抗だったのだろうか。

     

    迷える子羊を導くのは誰?

     

    ヘミングウェイは「失われた世代」という言葉を否定した。

    だが、人生の拠り所を失ったことは確かだった。

    そして現代人は、誰もがヘミングウェイになりうる。

     

    この記事で語ったように、僕らは大きな物語が終焉した時代を生きている。

    人々と共有できる拠り所がないまま、迷子になっているのだ。

     

    lost generationのlostには「失う」のほかに「迷う」という意味もある。

    失われた世代である僕らは、迷える世代でもあるのだ。

     

    だからこそ、導いてくれる人が必要である。

    拠り所となる物語を語ってくれるストーリーテラーが必要なのだ。

     

    僕はこの記事をきっかけに、あなたがストーリーテラーとして一歩を踏み出すことを願っている。

    僕はあなたのストーリーに触れたい。

     

    僕だけではない、大勢の人々が、あなたのストーリーを待ち望んでいるのだ。

    誰もが失われた物語を求めているのだから。

     

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