なぜあなたのストーリーブランディングは心に刺さらないのか?
1人の心理学者が発見した「人間の真実」があなたの発信を変える…

    1. Characterizing

    機関車の汽笛が響く。

    それは助けを求める悲鳴のようだった。

     

    その車両には80人もの人が押し込められている。

    誰1人として、自分たちがどこへ移送されているのかを知らかった。

     

    この状態が、もう何日続いたかわからない。

    だがようやく、列車が駅に停まる気配がした。

     

    列車の中で、人々の群れからふいに声が上がった。

    「駅の看板がある__!」

     

    やっと地獄のような移送が終わる…。

    だが本当の地獄が、今まさに始まろうとしていたのだ。

     

    列車の中に響いた声は、続けた。

    「駅の看板がある__アウシュヴィッツだ!」

     

    あなたはアウシュヴィッツを
    生きている

     

    もしあなたがこの列車に乗っていたら…

    そしてアウシュヴィッツの看板を目撃したら、冷静でいられるだろうか?

    僕にはとうてい無理だ。

     

    アウシュヴィッツはかつてナチスによって作られた強制収容所。

    強制収容所に送られたユダヤ人たちのほとんどが、毒ガス室へ入れられ、殺された。

     

    あなたはこの残酷な事実を、自分とは関係のない歴史の出来事と思っているかもしれない。

    だが本当にそうだろうか?

    僕らは次の真実を知らなくてはいけない。

     

    インターネットは
    ストーリーテラーにとって
    アウシュヴィッツだ

     

    これまでたくさんの専門家がストーリーを語ろうとし、そして死んでいった。

    効果的なストーリーブランディングを実践できなければ、インターネットでは生き残れない。

    僕らの周りにはストーリーテラーの死体が山積みになっている。

    次はあなたの番かもしれない…。

     

    インターネットというガス室の中で、僕らは生き延びなければならない。

    つまり僕らは、オーディエンスに選ばれ続ける存在になるべきだ。

     

    そのために今まで使われてきたのが、セールスライティング。

    一時的にオーディエンスの感情を動かし、財布の紐を緩めるように説得するために利用される。

     

    だが、セールスだけで選ばれ続けることは難しい。

    なぜなら誰もが説得されるより、好きな人から買いたいと思うから。

    あなたもそう思うだろう?

     

    では選ばれ続ける(生き延びる)ためには、どうすれば良いのか?

    そのためには、あなたのキャラクター(世界観)に興味を持ってもらう必要がある。

    あなたの世界観を共有したオーディエンスは、あなたに仲間意識が芽生えるからだ。

     

    「でも自分の世界観は、
    どう語り始めればいいの?」

     
    結論から言おう。

    あなたの活動がオーディエンスの(そしてあなたの)人生にとって、どんな意義を持っているかを語るべきだ。

     

    今回はこの「意義を語ること」がストーリーブランディングにおいて、どう働くのかをあなたに理解してもらいたい。

    意義がもたらす効果を理解することで、あなたは トライブを構築できるようになる。

    それは必死にセールスせずとも、自動的にオーディエンスから選ばれる存在になることを意味する。

     

    ストーリーブランディングにおける「意義」について、次の3つの視点から一緒に学んでいこう。

    • 心理学の視点:人間を惹きつける最も強力なもの
    • マーケティングの視点:メッセージを魅力的にする裏技
    • ストーリーテリングの視点:なぜあなたはストーリーに抗えないのか?そして究極の差別化とは?
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    【心理学の視点で見る
    意義の力】
    人間を惹きつける
    最も強力なもの

     

    あなたが今この世で1番ほしいものはなんだろう?

    「この世で1番ほしいもの」だ。

    それはモノ(高級車、ブランド品、マイホーム)かもしれないし、社会的地位や影響力かもしれない。

     

    では、次にこんな場面を想像してほしい。

    あなたの目の前に女神が現れ、こう言ったとしよう。

    「あなたが望むものを、ひとつだけ与えましょう」

    当然、あなたは舞い上がるだろう(僕ならその場で小躍りを始めるかもしれない)

     

    だが女神はこう付け加えた。

    「その代わり、1週間後にあなたの命をいただきます」

    僕は小躍りをやめた。

    「死ぬくらいなら
    そんなものいらねーよ!」

     

    …とあなたは思うだろう。

    僕も同じだ。

    どんな望みだって死んでしまったら、意味がない。

    そう思うだろう?

     

    僕らがこう考えるのは、自然なことだ。

    本能が「死にたくない」と必死に叫んでいるのだから。

     

    人間が生物学的に最優先で求めること、それは生き延びることだ。

    だから「生き延びるために必要なもの」に最も惹かれるよう、僕らの脳はプログラムされている。

     

    僕らが生き延びるために
    必要なことは…?

     

    それは「なぜ生きるのか」という「意義」だ。

    人は誰でも本能的に「人生の意義」を求めている。

     

    これを机上の空論と思わないでほしい。

    このことを証明した1人の心理学者がいる。

    この心理学者の名はヴィクトール・フランクル。

    彼はただの心理学者ではない。

    フランクルも、あのおぞましい列車の汽笛を聞いていたのだ。

     

    これはナチス強制収容所を体験した、1人の心理学者の物語である。

     

    「きさまを2日で
    あの世に送ってやるからな!」

     

    フランクルは1941年12月に結婚したが、その9ヶ月後にナチス強制収容所に収容された。

    そこで、職業、名前、所持品、そして人間の尊厳を全てを失った。

     

    収容所での過酷な土木作業は、フランクルの生命力を奪うには充分すぎた。

    フランクルは配水管を埋設するために、マイナス20度の森でカチカチに凍った土を掘り起こしていた。

    他の作業員と比べて、掘った土がちょっぴり少ないだけで、現場監督に殴られ、罵倒された。

    「この豚野郎!きさまにはもっとたんまり仕事をさせてやる!地べたに噛みつかせてやる!きさまを2日であの世に送ってやるからな!」

     

    凍傷の足を濡れた靴にねじ込む…

     

    その頃、フランクルは栄養失調により足がパンパンに腫れていた。

    肌がつっぱり、膝がろくに曲がらないほどだった。

    靴の紐を結ばずに、腫れあがった足を突っ込むしかない。

    むき出しの足はつねに濡れていて、ボロボロの靴には雪が入り込んでいた。

     

    当然、足は凍傷になり、歩くたびに地獄のような痛みがフランクルを襲う。

    だが歩き続けなければいけない。

    転んでも監視兵がとんできて、殴りかかり、すぐに立ち上がらせるからだ。

     

    本当の悪夢は・・・

     

    夜は縦2メートル、幅2.5メートルの板敷に、9人がびっちりと体を押し付け合って寝る状態だった。

    暖房などない小屋で、毛布は9人につき2枚だけ。

    枕がないので、靴を枕にする者もいた(たとえその靴が糞まみれだったとしても)。

     

    ある日、隣の仲間が悪夢にうなされていた。

    仲間を哀れんだフランクルは、仲間を起こしてやろうと思った。

     

    だが、仲間の肩に伸ばした手を、寸前で止めた。

    悪夢から目覚めさせるなんて、そんな酷いことはできない。

    なぜなら、どんな悪夢だって、収容所の現実に比べれば悪夢とは呼べないからだ。

    せめて今だけでも、夢の中で現実を忘れさせてやりたかった。

     

    「生き延びた人」「死んだ人」
    その差とは?

     

    そんな収容所では、隣の人間が死ぬことは日常茶飯事だった。

    死んでいった者と生き延びた者、その差は何だったのだろう?

     

    この問いに対し、フランクルは著書『夜と霧』のなかでニーチェの言葉を借り、こう述べている。

     

    「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」

     

    生きる意義を持っているかぎり、地獄のような環境でも生きていくことができると、フランクルは語る。

    逆に言えば、意義を失うと死は駆け足でやってくる。

     

    この事実をフランクルは収容所で目の当たりにした。

    1944年のクリスマスから1945年の新年の間に、収容所でかつてないほど大量の死者が出た。

    この原因は「クリスマスには家に帰れるだろう」という希望にすがっていた事だと、フランクルは語った。

    クリスマスを過ぎても家に帰れなかった事実に、多くの被収容者は落胆と失望に打ちひしがれた。

    それが身体の抵抗力を大きく下げたことが、この時期の大量死へとつながったのだ。

     

    これが「クリスマスに帰る」という “結果” に執着した人の末路だった。

    望む結果が得られなかった瞬間に、生きる意義を失ったのだ。

     

    あなたは今、ガス室にいる

     

    「100年前の強制収容所の話が、私に何の関係があるの?」

    …と、あなたは思っただろうか?

     

    先ほどの話は、実は収容所に限った話ではない。

    なぜ、現代で自殺者が増え続けるのか?

    それは生きる意義を失った人々の結果なのだ。

     

    意義を失うと、現代はガス室へ姿を変える。

     

    収容所で死んでいく者は、必ず次のような言葉を言ったという。

    「生きていることにもうなんにも期待がもてない」

    もしあなたの友人がそう呟いたら、あなたならどう答えるだろう?

     

    どうすれは意義を見つけることが
    できるのか?

     

    フランクルは精神科医として、被収容者の自殺を思いとどまらせることがあった。

    その事例としてフランクルは2人の男を挙げている。

    そしてその2人の事例は、驚くほど似ていた。

     

    2人の男は自殺願望を口にするようになっていた。

    「生きていることにもうなんにも期待がもてない」と。

     

    そんな2人に対し、フランクルはこう語りかけた。

    「生きていれば、未来に君を待っているなにかがある」

     

    1人には、自分の帰りを待つ子供がいた。

    もう1人には、情熱を注いでいる仕事があった。

    この人は研究者で、あるテーマで本を書いていたが、まだ完結していなかったのだ。

    前者にとって子供がかけがえのない存在であったように、後者にとってこの仕事はかけがえがなかった。

    このひとりひとりの人間にそなわっているかけがえのなさは、意識されたとたん、人間が生きるということ、生きつづけるということにたいして担っている責任の重さを、そっくりと、まざまざ気づかせる。

    自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きるということから降りられない。

    まさに、自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ。

    ヴィクトール・フランクル[精神科医・心理学者]

     

    このように「未来でなにかが待っている」という思考が、人生に意義を思い出させてくれる。

    だが、世の中のほとんどの人は、「未来でなにかが待っている」と考えることができない。

    あなたの周りにも、そんな人が多いのでは?

     

    それはなぜだろう?

    いよいよフランクル思想の根幹へと、足を踏み入れよう。

     

    フランクルが叫ぶ
    地獄からのメッセージとは?

     

    フランクルは心理学の知識と、強制収容所での体験から、次の真実へと辿り着いた。

    1字も読み飛ばさず、ゆっくり読んでほしい。

    「ここで必要なのは、生きる意味についての問いを180度方向転換することだ。

    わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることが私たちからなにを期待しているかが問題なのだ

    (中略)

    もういいかげん、生きることの意味を問うのをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ」

    ヴィクトール・フランクル[精神科医・心理学者]

    ほとんどの人は「自分の人生にはどんな価値があるのか?」と問うている。

    (もしかしたらあなたも…)

     

    だが人生は答えてくれない。

    なぜなら、人生が「君の人生にはどんな価値があるんだい?」と、僕らに問うているからだ。

     

    僕らがすべきなのは、人生に問うのではなく、人生からの問いに答えること。

    つまり、自分で人生に「意味づけ」をすることだ。

     

    強制収容所で死んでいった者は「こんな苦しい思いをしてなんの意味があるんだ」と考えた。

    しかし生き残ったフランクルは「この苦しみに意味があるとすれば、どんな意味があるんだ」と考えたのだ。

     

    自分の帰りを待っている子供を、この手で抱きしめられるなら、今の苦しみにだって意味はあるかもしれない。

    やり残した仕事を全うするためなら、今の苦しみにだって意味はあるはずだ。

    こうして「人生からの問い」に答えていくことが、人生の意義を作ることなのだ。

     

    あなたが人を惹きつけるために
    すべきことは?

     

    ストーリーテラーは人生の問いに答える人である。

    あなたの答え(人生の意味づけ)をオーディエンスへ伝え、人生の意義を伝えるのだ。

     
    多くの人は、人生からの問いに気づかない。

    だからオーディエンスの代わりに、人生からの問いに答えてやるのだ。

    そのメッセージに、オーディエンスは本能的に惹きつけられる。

    彼ら(の本能)は、生き延びるために、人生の意味を求めているからだ。

     

    なぜ、あなたは
    今の仕事をしているのか?

     

    そこにはあなただけの理由があるはずだ。

     

    さて、この問い(why?)の力をマーケティングに応用できるだろうか?

    もちろんだ。

    次は、マーケティングの視点で、意義の力を学んでいこう。

     

    【マーケティングの視点で見る意義の力】
    メッセージを魅力的にする裏技

     

    8月の炎天下。

    見渡すかぎりの群衆の中に、自分がいるところを想像できるだろうか?

     

    周りを見ると、皆が同じ方向を向き、“彼の言葉”を聞こうと首を伸ばしている。

    あなたも人をかき分け、できるだけ彼に近づこうとする。

     

    そして、彼は語り出した。

    「I have a dream__(私には夢がある)」

     

    あなたはWebサイトもSNSも使わずに
    25万人を集められるか?

     

    1963年8月28日、ワシントンDCに25万人が集まった。

    キング牧師のあの演説を聞くために。

     

    なぜキング牧師は25万人も集めることができたのか?

    それもWebサイトやSNSの力を借りずに。

     

    それはキング牧師が、公民権運動(人種差別の解消のための社会運動)の意義を語り続けたからだ。

    「どんな法であれ、人としての品位を高めるものは公平です。

    そして人としての品位を下げるものは不公平です。

    そして人種差別をよしとする制定はすべて不公平です。

    人種差別は人間の魂をゆがめ、人間の品位を傷つけるものだからです」

    マーティン・ルーサー・キング・ジュニア[牧師]

    キング牧師は、「なぜ公民権運動を主導するのか?」という「人生からの問い」に答え続けた。

    そんなキング牧師の言葉に胸を打たれた人は、彼の信念を自分のものとした。

    そしてその信念を周囲の人に伝え、周囲の人もまた人へ伝えた。

    その結果、あの日、25万人もの人がキング牧師の演説を聞くために集結したのだ。

     

    人を魅了する方程式とは・・・?

     

    「人生からの問い=意義」は、魅力的なメッセージを作る。

    これはキング牧師だけに言えることではない。

    「人を動かすリーダー」は皆、意義を伝えることで魅力的なメッセージを語ってきた。

    この事実を証明した1人の男がいる。

     

    あなたはサイモン・シネックという男を知っているだろうか?

    TED(世界中のあらゆる分野の研究者が、最先端の研究をスピーチする講演)で、伝説的なスピーチをした人物だ。

     

    サイモン・シネックのスピーチはYouTubeで視聴できる。

    ストーリーテラーにとって必聴コンテンツだ。

     

    サイモン・シネックは「人を動かすメッセージの作り方」を発見した。

    それを以下のようにシンプルな法則にまとめた。

     

    優れたリーダーは「why→how→what」の順で語る

     

    具体的な例を語ろう。

    例えば、一般的な企業が新商品のコンピューターを発表する場合、以下のようなメッセージになるだろう。

    【普通の企業の場合】

    われわれは、すばらしいコンピューターを作っています。

    美しいデザイン、シンプルな操作法、取り扱いも簡単。

    一台、いかがです?

    このように、普通はwhat→howで語り、whyは語らないことがほとんど。

    まず「なにを作ったか(what)」を説明し、次に「どんな手法をとったか(how)」を説明する。

     

    だが人の心を動かす優れたリーダーは、逆の順番で語る。

    Appleが新商品を発売するとしたら、どう語るだろう。

    【Appleの場合】

    現状に挑戦し、他者とは違う考え方をする。

    それが私たちの信条です。

    製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。

    その結果、すばらしいコンピューターが誕生しました。

    一台、いかがです?

    どうだろう?

    Appleの商品が欲しくなったのでは?

     

    2つのメッセージは、情報は同じだが異なるメッセージに感じるはずだ。

    無料の特典も、有名人の推薦も追加していない。

    ただ情報の順番を逆にしただけなのだ。

     

    「あなたのことが好き」を作る方法

     

    Appleは最初にwhyを語ることで、オーディエンスにとってAppleには商品以上の意義があることを伝えている。

    「Appleはなぜ存在するのか?」という「人生からの問い」に、Appleは答えているのだ。

    そうすることで「他者と違ったふうに考えたいオーディエンス」にとって、Appleは生き延びるために力を授けてくれる存在であり、自分の考えは正しいのだと思い出させてくれる存在になる。

     

    Appleが意義を伝え続けると、オーディエンスはどんな状態になるだろう?

    「 “Appleを好きな自分” が好き」という状態になるのだ。

    なぜなら「人と違ったふうに考えたい人」にとって、Appleを選ぶことは「自分が人と違ったふうに考えてる証拠」になるからだ。

     

    彼らはAppleを選ぶことで、理想の自分に近づいている気分になる。

    あなたも好きなブランドの製品を買うとき、そう感じるのでは?

     

    これはフランクルの言った「未来で自分を待っているなにか」と本質的に同じである。

    人は未来に待っている「理想の自分」に近づけるなら、どんなに高価でもAppleを買う。

    フランクル風に言うなら、なぜ買うのかを知っているものは、どのように買うかにも耐えるのだ。

     

    キング牧師の演説を聞きに来た25万人は、キング牧師のために集まったのではない。

    自分のために演説を聞いていた。

    自分の価値観を反映した国で暮らすために、8時間もバスに揺られ、8月のジリジリするような太陽光の下に集まったのだ。

     

    全ては、人生からの問い=why(存在意義)について語ることから始まる。

     

    なぜwhyは人を動かすのか?

     

    「でも本当に語る順番だけで、そんなに変わる?」

    そう思うだろうか?

    なるほど、ではその問いに答えよう。

     

    実は、あなたの脳がwhyに支配されていることは、生物学的に証明されている。

     

    昔から「感情が決定し、理性が正当化する」という言葉がある。

    あなたの行動の決定権は感情にあり、理性が「この選択は正しかった」と理屈をこね始めるのだ。

    感情「ダイエット中だけどケーキ食べたい!」
    理性「まあ…我慢しすぎてストレス溜めるよりは少しくらいいいよね…」

    このように、理性は感情を甘やかす。

    (あなたも思い当たる経験があるかも…?)

     

    そしてwhyは感情にアプローチし、howやwhatは理性にアプローチすることが、脳科学的に証明されている。

     

    感情は言語を持たず、いつも直感で行動する。

    だからhowやwhatで、「科学的な…」「最新の技術が…」と説明されても、感情は動かない。

     

    whyは直感を刺激するから、人を動かせるのだ。

    脳は生き延びるために必要な、why(=意義)の力を知っているからだ。

    「偉大なるリーダーは自分の直感を信じている。

    かれらは科学以前に、まず芸術に信頼を置く。

    彼らは頭脳以前に、まず人々の心を獲得する。

    かれらはWHYで始める人たちだ」

    サイモン・シネック[作家]

     

    1人で放浪するより
    一緒に旅をしないか?

     

    「人生からの問い」が意義を生む。

    目的が決まると、放浪が旅になるのと同じだ。

     

    フランクルとApple、そしてキング牧師は、精神的放浪者に目的を持たせ、人生の旅を導いた。

    意義を伝えることで、オーディエンスの人生にストーリーを与えたのだ。

     

    だが、どうして意義(Why)は、僕らの内に眠るストーリーを呼び覚ますのだろう?

    そして僕らはなぜストーリーに惹かれるのだろうか?

     

    最後にストーリーテリングの視点で「意義」の持つパワーを理解しよう。

     

    【ストーリーテリングの視点で見る意義の力】
    なぜあなたはストーリーに
    抗えないのか?
    そして究極の差別化とは?

     

    突然だが、あなたは宇宙人の存在を信じているだろうか?

    僕は宇宙人に会ったことはないが、いたら面白いだろうなとは思う。

     

    子供の頃に観た『E.T.』や『メン・イン・ブラック』などの映画を思い出して、もし隣の人が実は宇宙人だったら…と妄想したことが何度もあることを告白しよう。

    いまだに、夜空に動く小さな光体を見つけると「まさか…」と思ってしまう。

    そして3秒後にそれが飛行機だと分かると、1人で恥ずかしくなる。

     

    なぜ飛行機がUFOに見えるのか?

     

    それは脳がストーリーという窓から世界を眺めているからだ。

    目の前に謎の物体が現れると、脳はその正体を知りたがる。

    そして過去の感情的体験に当てはめて、謎の物体の意味を作り出すのだ。(あの謎の光体はなんだ?……UFOに違いない!)

     

    脳は謎が大嫌いだ。

    そして謎を埋めてくれるのがストーリーなのだ。

    つまりストーリーとは、意義を探求することである。

     

    だから意義が提示されると、その意義を証明するために、頭の中でストーリーが動き出す。

    これは脳が自動的に行う処理プログラムだ。

    世界一のストーリーテラーは、あなたの脳なのだ。

     

    世界一のストーリーテラーを
    味方にするには…

     

    人間の脳はストーリーに反応するようプログラムされている。

    これはあなたも(もしマーケティングを学んでいるなら当然)納得の事実だろう。

     

    だが「なぜストーリーに反応してしまうのか」をあなたは説明できるだろうか?

    実は多くの人はこの理由を説明できない。

     

    説明できないことを、正しく使うことはできないはずだ。

    フランクルならこう言うだろう。

    「なぜストーリーに反応するのか」を知っている者は、「どのようにストーリーを使うか」も分かる。

     

    あなたがストーリーに反応する理由とは?

     

    なぜ集中力のない子供が、アニメを見るときだけ異常な集中力を発揮できるのだろう?

    それはストーリー自体が問いを提示するものであり、謎を生み出すからだ。

     

    世界一のシナリオ講師ロバート・マッキーは、こんな言葉を残している。

    「全てのストーリーは探求の形式をとる」

     

    この言葉を借りて、ストーリーを「なにかを探求する思考」と定義してみよう。

    そうすると、全ての主人公は探求者であることが分かる。

    • ロミオとジュリエットは、両家の争いを乗り越え、互いに結ばれることができるのか?
    • ジャック・スパロウとウィル・ターナーは、海賊に連れ去られたエリザベスを助けられるか?
    • ルフィは海賊王になれるのか?

     

    このようにストーリー全体をつらぬく探求を、ナラティブ・クエスチョンと呼ぶ。

     

    ナラティブ・クエスチョンは必ずストーリーの冒頭で提示される。

    なぜならナラティブ・クエスチョンが、オーディエンスをストーリーに引き込む働きをするからだ。

     

    なぜあなたの脳は
    ナラティブ・クエスチョンを
    無視できないのか?

     

    Netflixで途中で観るのをやめるつもりだった映画を、結局最後まで観てしまった…。

    あなたもそんな経験あるのでは?

    (僕にはある、それも何度も)

     

    途中で観るのをやめようと決めていたのに…。

    なぜ、そんなことが起こるのだろう?

     

    それは脳が「問い」に対し、「答え」が得られない状態を嫌うからだ。

     

    例えばテレビ番組でクイズが出題され、CMに移ったとしよう。

    あなたはクイズの答えを知りたくて、見たくもないCMを我慢した経験がないだろうか?

    あのときの居心地の悪いモヤモヤ感を思い出してみよう。

    「問いに対する答え」を求める脳の気持ちがわかったかもしれない。

     

    「問い」とは旅の始まりであり、結末の「答え」を知るまで、その旅をやめることは難しい。

     

    ストーリーはこの「脳の探求心」を刺激する形式なのだ。

    だからストーリーのナラティブ・クエスチョンに触れたとき、いつの間にか結末まで旅をしてしまうのだ。

     

    あなたのナラティブ・クエスチョンは?

     

    「で、つまり何が言いたいの?」

    よし、僕が伝えたいことをまとめよう。

     

    つまり意義を語るとは、あなたの活動のナラティブ・クエスチョンを提示することである。

     

    例えばあなたがパーソナルトレーナーだとしよう。

    そしてトレーニングを行う意義として「健全な魂は、健全な肉体に宿る」ことを伝えたいとする。

    その意義に共感したオーディエンスは、あなたと共に「健全な魂は、健全な肉体に宿る」ことを証明する旅が始まるのだ。

    「健全な魂は、健全な肉体に宿るのか?」というナラティブ・クエスチョンが設定されたのである。

     

    一度ナラティブ・クエスチョンが設定されると、この旅をやめることは難しい。

    なぜなら、トレーニングをやめることは、自分を否定することになるからだ。

    なぜトレーニングするかを知っているので、どのようなトレーニングにも意義を見出せるのだ。

     

    さらに…ナラティブ・クエスチョンを設定することは、ストーリーテラー自身にとっても重要だ。

    マーケターと作家は「ストーリーを作る」という点では、同じ仕事をしている。

    あなたもそれが分かってきたのでは?

    つまり、あなたがストーリーブランディングを実践するには、作家がどのようにストーリーを作っているのかが参考になる。

     

    作家がストーリーテリングの
    深い森で迷わないために
    実践している秘密…

     

    作家にとってナラティブ・クエスチョンは、北極星だ。

    クエスチョンを設定すれば、ストーリーを語る際に、論点をズラさずに語れるから。

     

    駆け出しの作家によくある失敗に「論点がズレる」ことがある。

    言いたいことが溢れてしまい、結局なにが言いたいのかわからない状態になってしまうのだ。

     

    だがナラティブ・クエスチョンを設定すれば、道に迷うことはなくなる。

    ナラティブ・クエスチョンに関係のあることに焦点を絞って語れるからだ。

    そうすることで、ストーリーテラーとオーディエンスの双方が、ストーリーの森の中で道に迷わなくて済む。

     

    ストーリーブランディングも同じだ。

    どんな活動も、一貫したテーマ(意義)が根底にあることで、一貫した世界観を作る。

    あなたの活動は、すべてあなたの意義を伝えるものでなくてはならない。

    (前の文をもう一度読み返そう、すごく大切なことだ)

     

    逆に言えば、主張するテーマが伝えられるなら、どんな活動でも構わない。

    大事なのは、一貫したメッセージを守ることだ。

    この一貫性はナラティブ・クエスチョンを設定することで管理できる。

    森に入る前に、北極星を見つけておこう。

     

    そして最も重要なことは…

     

    最終的に「誰が語っているか」がすべてだ。

    だから僕は キャラクタライズを重要視している。

    そして意義はキャラクタライズの根幹にあるものだ。

     

    意義とは「なにを探求し、証明したいのか?」ということ。

    同じ活動をしている人でも、活動の意義はそれぞれ異なる。

    つまり意義を語ることは、自分のキャラクターを物語ることであり、究極の差別化になる。

     

    Appleを思いだそう。

    人々はApple製品を「製品のクオリティが高いから」買うのではない。

    Appleだから買うのだ。

    Appleは「Appleというキャラクター」を守れば、どんな製品を販売しても売れる。

    Appleというキャラクターは、Think differentの重要性を証明するための、探求の旅によって表現されているのだ。

     

    キング牧師は「私には夢がある」と言った。

    「私には計画がある」ではなく。

    計画は誰でも語れるが、意義を語ったのはキング牧師だけだった。

     

    あなたはなにを探求し、証明したいのか?

     

    あなたという人間は、世界であなた1人である。

    つまり、あなたの存在意義も、世界にひとつの意義なのだ。

     

    「あなただから」という理由で、あなたが選ばれることが、究極のブランディングである。

    これが 「我物語る、ゆえに我あり」の精神なのだ。

     

    自分のキャラクターを表現する意義を見つけるには、深い自己理解が必要だ。

    • あなたはなにを探求し、証明したいのか?
    • なぜ今の活動をしているのか?
    • どんな価値観を最も大切にして生きているのか?

    そうやって「人生からの問い」に答えることで、あなただけの意義は見えてくる。

     

    具体的な意義の見つけ方を語るとまた長くなってしまうので、ここでは割愛する。

    「もっと具体的な方法が知りたい」という声があれば、他の記事にしようと思う。

    もしあなたも興味があれば、この記事にコメントしてほしい。

     

    ここでは意義の重要性について理解してくれたらOKだ。

    どんなに困難な問題にぶつかっても、自分にとっての意義を知っていれば、乗り越えることができる。

    まさに「なぜ生きるのか知る者は、どのように生きる事にも耐える」のだ。

     

    ストーリーブランディングの
    本質とは?

     

    さて、この記事では、意義が人間に与える影響について語ってきた。

    まとめると・・・

    • 人は生き延びるために「人生の意味」を求める
    • 人々は「共感する人生の意味」を定義してくれる人を求めている
    • why?に答えることで、オーディエンスに意義を感じさせることができる
    • 意義が設定されることで、ストーリーは動き出す
    • 意義とは「なにを探求し、証明したいのか」である

    あなたはなにを探求し、証明したいだろうか?

    それこそが、ストーリーブランディングの本質なのだ。

     

    もういちど聞きたい。

    あなたが探求し、証明たいものは?

    その答えをSNSで発信してほしい。

    そこからあなたのトライブは始まるのだ。

     

    「奪う人」「与える人」
    アウシュヴィッツの中で
    あなたはどう生きるか?

     

    ストーリーブランディングとは、意義(なにを探求し、証明したいか)を語り続けることだ。

    あなたの人生の意義は、あなたが決めることができる。

    それはあなたの存在意義を、あなた自身が決めるということだ。

     

    僕らは環境によって価値を決められる存在ではない。

    自分がどう生きるかは、自分で選ぶことができる。

     

    フランクルは強制収容所で、その事実を目にしていた。

    いつ自分が死んでもおかしくない状況では、ほとんどの人は他者を気づかう余裕はなく、パンの奪い合いになるだろう。

    だが、ほんのひと握りだったにせよ、収容所で通りすがりに思いやりの言葉をかけ、なけなしのパンを譲っていた人がいる事実を、フランクルは忘れることができなかった。

     

    人は強制収容所に人間をぶちこんで、すべてを奪うことができる。

    だが「その環境でどうふるまうか」という最後の自由だけは奪えない。

    どんな環境であっても、あなたの在り方だけは、あなたが選べるのだ。

     

    「わたしたちは、おそらくこれまでどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。
    では、この人間とはなにものか。
    人間とは、人間とはなにかを常に決定する存在だ。
    人間とは、ガス室を発明した存在だ。
    しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ」

    ヴィクトール・フランクル「精神科医・心理学者」

     

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